研究概要 |
昨年度、合成法を確立した分子内水素結合を基軸とした新規なキラルブレンステッド酸触媒の不斉有機分子触媒としての可能性を従来型キラルブレンステッド酸と比較した。ビナフチル基の3, 3'位に様々な置換基を有する従来型ブレンステッド酸を合成し、4-メチル-4-メトキシカルボニル-2, 5-シクロヘキサジエノンとシクロペンタジエンとのDiels-Alder反応における不斉触媒能を検討した。9-アントラセンを3, 3'位の置換基として有するキラルブレンステッド酸を用いると収率82%、61%eeの立体選択性でDiels-Alder生成物が得られることがわかった。また、3, 3'位の置換基として9-アントラセンを有するキラルブレンステッド酸のビナフチル基の芳香環部分を一部還元し反応温度を-10℃にすると、Diels-Alder反応の立体選択性は70%eeに向上した(収率49%)。この結果は、昨年度、創製した新規ブレンステッド酸触媒に比べ、反応収率は劣るものの立体選択性は向上したものであった。本年度の研究成果に基づき、3, 3'位に9-アントラセンを有する還元されたビナフチル骨格を基本骨格として分子内水素結合を基軸とした新規なブレンステッド酸触媒を設計することで、従来型キラルブレンステッド酸触媒より高いルイス酸性を有した新規ブレンステッド酸触媒を創製し、従来型ブレンステッド酸ではルイス塩基性が低いため反応基質として用いることが出来なかった化合物の不斉反応へ応用されることが期待できる。
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