研究概要 |
昨年度までに合成法を確立した分子内水素結合を基軸とした新規なキラルブレンステッド酸触媒の4-メチル-4-メトキシカルボニル-2,5-シクロヘキサジエノンとシクロペンタジエンとのDiels-Alder反応における作用機序に関する研究を行った。キラルブレンステッド酸触媒のDiels-Alder反応における不斉発現機構を解明にするため、Diels-Alder反応の生成物を絶対立体配置が既知の化合物に変換し、その比旋光度を比較することでDiels-Aler反応の主生成物の絶対立体配置を決定した。遷移状態における反応基質とブレンステッド酸との相互作用の仕方を解明するためDiels-Alder反応の遷移状態について量子化学計算を行ったところ、先に決定した絶対立体配置の生成物を与える遷移状態がエネルギー的に一番、安定な遷移状態であることがわかった。その遷移状態ではキラルブレンステッド酸のリン酸部分の水素原子がブレンステッド酸として働くだけでなく酸素原子がブレンステッド塩基として働き、キラルブレンステッド酸が反応基質と2点で相互作用するため、キラルブレンステッド酸を用いたDiels-Alder反応において不斉が発現することが示唆された。Diels-Alder反応の反応基質として4-メトキシカルボニル体以外にも4-シアノ体、4-メトキシ体、4-ヒドロキシ体、4-フルオロ体に関する量子化学計算を行ったところ、4-メトキシ体を用いたDiels-Alder反応では主生成物を与える遷移状態と副生成物を与える遷移状態のエネルギー差が一番、大きくなることがわかった。今後、キラルブレンステッド酸触媒を用いた4-メトキシ体のDiels-Alder反応を検討することで立体選択性の改善が期待される。
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