研究課題
高共役π電子系化合物は、電界効果トランジスタ(FET)やセンサーなどの高機能性材料として大変興味が持たれているにもかかわらず、合成困難なため電子状態や光特性などの基本的な物性さえも測定をおこなうことが困難な化合物群である。申請者は、熱による逆Dierls-Alder反応や光による脱硫化カルボニル反応などのペリ環状分解反応によりπ電子系を融合する方法を開発した。これらの前駆体化合物は、嵩高さゆえに通常の溶媒によく溶け、π電子系も独立しており、精製が簡単な化合物である。この方法を発展させ、高純度の様々なπ電子系の融合した化含物群を合成し、その基本的な諸物性を明らかにするとともに、これまで類をみないπ電子系化合物の創出を目指した。以下に今年度の主な成果を上げる。(1)長いアルキル鎖を有し、ビシクロ[2.2.2]オクタジエンを通じてピロールと縮環したポルフィリンを四量環化させて五量体前駆体を合成した。これを熱分解し、X字型にπ電子系が融合したポルフィリン五量体を合成し、会合挙動および電子状態とUVスペクトルとの闘係を明らかにした。(2)ペンタセンの硫化カルボニル付加体、ケテン付加体およびこれらの類縁体を合成し、光および熱挙動を検討した。硫化カルボニル付加体については塗布法によるOFETデバイスを作成し、3.O_x10-2cm^2V^<-1>s^<-1>の移動度を得た。(3)ビシクロ[2.2.2]オクタジエンが環内に組み込まれたヘキサフィリンの合成を目指した。理論計算からこの化合物は、ヘキサフィリンとベンゼンの芳香族性が独立していることが示唆された。現在目的の化合物には至っていないが、類縁のジヒドロ体を得ている。(4)その他、種々のπ電子系化合物の合成と物性評価を行った。(1)および(2)の成果については平成21年度中の論文発表を予定している。
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