研究概要 |
高共役π電子系化合物は、電界効果トランジスタ(FET)やセンサーなどの高機能性材料として大変興味が持たれているにもかかわらず、合成困難なため電子状態や光特性などの基本的な物性さえも測定をおこなうことが困難な化合物群である。申請者は、熱による逆Dierls-Alder反応や光による脱硫化カルボニル反応などのペリ環状分解反応によりπ電子系を融合する方法を開発した。これらの前駆体化合物は、嵩高さゆえに通常の溶媒によく溶け、π電子系も独立しており、精製が簡単な化合物である。この方法を発展させ、高純度の様々なπ電子系の融合した化合物群を合成し、その基本的な諸物性を明らかにした。また、本方法の反応機構上の特徴を整理し、これの適応できるπ電子系化合物の類型を明らかにするとともに、これまで類をみないπ電子系化合物の創出を行った。具体的な成果を以下にまとめる。 (1)8-オキソ-4,7-ジヒドロ-4,7-メタノ-2H-イソインドール部位の分解反応により、これまで合成報告のないアンスロ[2,3-c]ピロールの合成に成功した。この成果は、学会で口頭発表した。 (2)ビシクロ[2.2.2]オクタジエン環で連結されたポルフィリン二量体によるフラーレン類の識別をおこない、ジエタノアントラセン架橋ジポルフィリンが、C70を選択的に包摂することを見出し、論文および学会で報告した。 (3)ビシクロ[2.2.2]オクタジエンを館内に組み込んだフロリンを合成した。 (4)新規ポルフィリノイド化合物の合成と構造解析およびそのπ電子系の拡張を行い、論文および学会口頭発表として公表した。
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