研究概要 |
よく光るケイ素置換芳香族化合物の開発とその発光機構の解明を目的として研究を行ない、以下の知見を得た。 1.フェニルエチニル基、ナフト-1-イルエチニル基、(4-メトキシナフト-1-イル)エチニル基を1個から4個導入したシラン類をそれぞれ合成し、吸収・蛍光特性を調べた。その結果、アリールエチニル基の数の増加に伴い蛍光量子収率(Φ_f)が増大し、最大でΦ_f=0.55となることが分かった。また、エチニル基-ケイ素-エチニル基の間のσ-π共役またはケイ素の空の3d軌道を介した共役の拡張効果はほとんどなく、アリールエチニル基はシラン類の蛍光特性において、LUMOを低下させる電子求引基としてはたらくことを明らかにした。 2.酸素で架橋した[3.3](1,3)ピレノファン誘導体は、シン体とアンチ体の立体配座がそれぞれエネルギー極小値として存在し、シン体とアンチ体では異なる波長領域に吸収帯をもつことが分かった。また、シン体とアンチ体のそれぞれを選択的に励起したところ、シン体からはエキシマー発光が、アンチ体からはモノマー発光が主に観測されること、および、酸素で架橋した場合、平衡はシン体に片寄っており、溶媒の極性を下げるとアンチ体の割合が増加することを見いだした。 3.ほとんど報告例のないペリレンエキシマーを示す分子の開発を目指し、2,2-ビス(エトキシカルボニル)-1,3-ジ(3-ペリレニル)プロパンを、ペリレンから4段階の反応を経て合成した。種々の溶媒で蛍光を測定したが、450-550nmにモノマー発光のみを示す分子であることが分かった。
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