研究概要 |
よく光る有機ケイ素化合物の開発とその発光機構の解明、発光材料としての利用を目的として研究を行ない、以下の知見を得た。 1. テトラキス(シリルエチニル)ピレン誘導体の吸収・蛍光特性に与えるケイ素上の置換基の効果を調べた。その結果、ケイ素上の置換基が、トリメチル、tert-ブチルジメチル、ジメチルフェニル、メチルジフェニル、トリフェニルの順に吸収が長波長側にシフトし、分子軌道計算によって求めたHOMOとLUMOのエネルギー差と良い相関を示した。蛍光も同じ順に長波長シフトし、5-7nmほどのストークスシフトを示した。蛍光強度は無置換のピレンに比べて著しく大きく、ケイ素上の置換基による蛍光強度の差はほとんど認められなかった。 2. 分子内にピレンの剛直な並列構造をもつ化合物は、低濃度でもエキシマー発光のみを示すと期待される。本研究では、1, 8-ナフチル基により二分子のピレンを分子内で並列に固定化した構造を有する1, 8-ビス(ピレン-1-イルエチニル)ナフタレンを合成し、10^<-5>Mの濃度で蛍光スペクトルを測定したところ、460nm付近を極大とする顕著な分子内エキシマー発光のみを示す化合物であることが明らかになった。 3. モノマー発光とエキシマー発光を外部刺激によって変えられるスイッチ分子の開発を目指し、硫黄および酸素で架橋された[3.3](1,3)ピレノファン類を合成し、その構造変化について検討した。温度可変^1H NMRを測定した結果、室温ではシン体とアンチ体の速い平衡にあり、より低温では、コアレッセンスが観測された。また、吸収・蛍光スペクトルの溶媒依存性を調べたところ、溶媒の極性が小さい場合には主にアンチ体からのモノマー発光が観測され、溶媒の極性が増大するにつれてシン体からの分子内エキシマー発光の割合が増加することが分かった
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