希土類は遷移金属と比べ、サイズが大きいため、ペロブスカイト型酸化物ABO_3を形成すると、物性を決定するBサイトに入らずAサイトに入るため、希土類が物性の主役とならない。一方、ペロブスカイト型構造は極めて高い化学組成に関する自由度を持ち、適当な組成および合成条件を選択することにより、結晶構造および金属元素の原子価状態を制御することが可能である。そこでペロブスカイト型酸化物ABO_3で希土類を物性の表舞台に立たせるため、サイズの大きく異なる白金族元素と組み合わせることにより、(1)ペロブスカイトABO_3のBサイトに、希土類を入れることができ、しかも希土類と白金族元素は構造的に秩序化したペロブスカイト化合物を系統的に新規合成した。(2)すべての化合物は低温で反強磁性転移し、その磁気的性質を中心に、これら2つの元素の相互作用に伴うf-d混合電子系の示す新しい磁気的性質を見出した。 特に本年度の研究では、12層構造をもつ新規ペロブスカイト型酸化物Ba_4LnRu_3O_<12>の合成に成功し、その結晶構造と磁気的性質に関する研究を行った。観測された磁気的挙動が、Ru_3O_<12>トライマー構造中のRuの磁気モーメントと希土類の4f電子との磁気的相互作用による物であることを明らかにした。
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