| 研究概要 |
古典的なバルク磁石とは異なり,零次元ないし一次元構造を持つ磁性体は長距離磁気秩序構造を形成しないことからナノ磁石と呼ばれ,その物性解明と磁気特性の向上を目指した合成手法の開発は,現在の金属錯体研究における大きなトピックスである.特に外場に対して応答性を示すナノ磁石の構築は,分子レベルでのメモリ素子など高密度な分子デバイス実現に向けて重要な研究テーマである.一次元構造を持つナノ磁石「単一元鎖磁石」は鎖状錯体一つ一つが磁石として振る舞う化合物であるが,大きな基底スピン多重度と容易軸型の磁気異方性の導入・制御を目指した分子設計が行われてきた,報告者は容易面型の金属イオンである高スピンFe(II)イオンを垂直に捩れながら配置させることにより系全体としての容易軸を実現する方法に成功し,その物性研究を進めてきた.錯体系のバリエーションとして有機配位子Hbpcaのピリジン環の6位に種々の置換基導入を試み,新規に得られたHbpca誘導体を用いた一次元鎖錯体の合成,構造解析と磁気特性の解明を行った.いずれの錯体においても単一次元鎖磁石としての特性が観測されたが,結晶溶媒の吸脱着にともなう磁気的振る舞いの変化に大きな差異が見られたが,これは,結晶溶媒の抜けにくさ,抜けた後の結晶性を保持するかどうかなどに依存するものであった。溶媒級脱着にともなう可逆的な構造変化を示すものや結晶相からアモルファス相への不可逆な相変化示すものなどについて,磁気挙動の変化を詳細に調べ,Full paperとして報告した
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