研究課題
水溶液中におけるピリジン環周囲の水和構造を解明する目的で、ピリジン分子の^<14>N/^<15>NおよびH/D同位体分率を変化させた4種類の10mol%ピリジン水溶液について中性子回折実験を実施した。実験は日本原子力研究開発機構JRR-3M研究炉に設置されている東京大学物性研究所4G(GPTAS)分光器を用いて行った。各試料溶液について観測された散乱断面積の差に注目して解析を行う事により、ピリジン環のN原子およびH原子周囲の水和殻の構造について以下の知見が得られた。ピリジン分子のN原子周囲の水和構造:最近接水分子は、1つの水素原子をピリジンのN原子に向ける形で水素結合を形成している。最近接N(ピリジン)…D1(水分子)距離r_<ND>=1.95(1)Å、平均振幅1_<ND>=0.16(1)Å、配位数n_<ND>=2.5(2)という結果が得られた。水溶液中ではピリジン環のN原子は平均2.5個の水分子と水素結合を形成している事が明らかになった。ピリジン分子のH原子周囲の水和構造:最近接水分子のピリジン環に対する配向は明確ではない。最近接H(ピリジン)…D_2O距離r_<N…D20>=2.82(1)Å、平均振幅1_<N…D20>=0.27(1)Å、配位数n_<N…D20>=1.2(1)という結果が得られた。ピリジン分子の水素原子…最近接水分子間の相互作用は弱いが、完全にランダムなのではなく、特定の水和構造をとっている事が初めて明らかになった。
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Bulletin of the Chemical Society of Japan 82
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Activity Report on Neutron Scattering Research(ISSP, University of Tokyo) 16(CD-ROM)