研究概要 |
青色リン光材料として注目されているイリジウム錯体の中で,特徴的な性質を示すtris(2-phenylpyrazole)iridiuzn(III)(Ir(ppz)_3)について、室温,溶液中で非発光性である事について検討を加えた。特に,mer-△体異性体からの光幾何異性化に付随して誘起される光学異性化では,fac-△とその光学異性体fac-∧がやや過剰に(fac-△が約18%ee)生成してくる。これは典型的な熱異性化反応と反対の光学異性体が過剰に生成したことになる。別途単離したfac-△, -∧は幾何異性化しないが,ラセミ化の量子収率はmer体の幾何異性化の少なくとも20分の1以下であった事から,mer体の幾何異性化で誘起される光学異性化は,幾何異性化に付随して起きた事がわかる。さらにこの幾何異性化の時,mer-△異性体からmer-∧異性体への光学異性化が起きないことがわかり、非常に注目される。これまで提案されている熱異性化や光異性化の機構では,結合(配位子)の組み換えについて生成する四角錐や三方両錐型中間体からの幾何学的かつ確率的な扱いでは説明ができない。そこで計算科学と実験化学を融合させた方法により。2つのアキシャル位のIr-N結合の解裂により△,∧体が作り分けられること,その経路上の活性化エネルギーの大小が生成する光学異性体過剰率を支配している事を明らかにした。さらに,配位子を代えた錯体では分割した光学異性体から100%のエナンチオ過剰率で異性化が進行する特異な例を発見することができた。
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