研究課題
キラルなo-キシリレン架橋二座NHC配位子とパラジウムからなる触媒系を用いて、不斉アリル位アルキル化反応を群細に検討した。その結果、カルベン窒素上にベンジル基を有する二座ベンズイミダゾールカルベン配位子とπ-アリルパラジウム錯体からなる触媒系を用いることにより、アリル位アルキル化反応が87%、80%eeの収率で進行することがわかった。不斉触媒反応における錯体化学的な知見を得るために、二座NHC配位子を有するパラジウム錯体の合成を行ったところ、架橋部位であるo-キシリレン部位がパラジウムと相互作用(配位)し、C_2対称構造ではない錯体(C_1対称)が得られた。この錯体のキシリレン部位は溶液状態において動的な挙動を示し、C_1およびC_2構造間での構造変化が観測された。以上の結果から、C_2対称反応場を構築するためには、より強固な架橋部位を構築する必要があることが示唆された。二座カルベン配位子を用いたルテニウム錯体の合成を検討した。その結果、二座カルベン配位子を有する配位不飽和16電子ルテニウム錯体を単離することに成功した。本錯体の反応性について、今後、検討を継続する予定である。アニオン性配位子であるインデニルとNHCを組み合わせたハイブリッド型配位子は、その前駆体において酸性度の異なる二つのプロトンを引き抜く必要がある。そのため、本配位子を用いた二核錯体の合成は一例しか報告されていない。前年度までの研究において、同種二核錯体および異種核二核錯体(前周期および後周期遷移金属)の合成に成功した。今年度は二つの金属フラグメントの相乗効果に由来する特異な炭素-炭素結合生成の触媒能を探索する目的で、アリル位アルキル化反応およびラジカル重合に関する検討を行った。現在までのところ、二核錯体に由来する特異な反応性は確認できていない。今後の更なる検討を推進する予定である。
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