研究概要 |
20年度の研究では、(1)イリジウム原子間に二重結合もつ二核錯体[(IrCp^*)_2(μ-CH_2)_2] (1,Cp^*=η^5-C_5Me_5)によるメタノールからの水素引き抜き反応の化学量論を決定した。室温、錯体1とメタノール、エタノールおよびベンジルアルコール(1:2)との反応では、それぞれ定量的にシスジヒドリド錯体cis-[(IrCp^*)_2(μ-CH_2)_2(H)_2]が生成し、後者二つのアルコールでは対応するアルデヒドを検出した(なおメタノールとの反応ではジヒドリド錯体の生成は定量的に検出されるもののホルムアルデヒドの検出はできなかった)。かさ高いイソプロピルアルコールを用いた場合は、反応が進行しなかった。生成したジヒドリド錯体がいずれの場合もシス構造であることは、赤外吸収スペクトル、^1H NMRスペクトルおよび単結晶X線構造解析により同定した。 (2)重水素化されたCD_3OD、CD_3OH、CH_3ODを用いて生成する錯体中の重水素分布を調べた。その結果、メタノールからの水素引き抜きは、メチル基および水酸基の両方で起こっていることが分かった。 (3)アルデヒド生成を触媒的に進行させるためには、生じたシスジヒドリド錯体からH_2を発生させ、もとの錯体1を再生させる必要がある。H_2発生に光エネルギーを利用するため、Cp^*(η^5-C_5Me_5)配位子のメチル基の一つを集光性のあるナフチル基やピレニル基に置換した錯体1の類縁体を合成した。
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