研究概要 |
本研究課題の目的は、我々が先に報告した対称型ルテニウム(II)-金(I)複合錯体と今回合成を目指す非対称型ルテニウム(II)-金(I)複合錯体の光物理過程における差異を解明し、非対称型に期待される一方向的な電子移動及び光励起電荷分離状態の存在を証明することにある。そのために必要な第一段階の研究計画として、20年度は以下に述べる置換位置の異なるRu(II)-Au(I)ヘテロ2核錯体及び非対称型Au(I)-Ru(II)-Au(I)複合錯体の合成と基本的な光物性測定を行った。具体的には5位及び3,6位にそれぞれエチニル置換基を持つフェナントロリンを含むルテニウム(II)ポリピリジル錯体と金(I)トリフェニルホスフィンクロライドから合成したルテニウム(II)-金(I)複合錯体を合成し、電子スペクトル及び発光スペクトルの測定結果より金(I)エチニルユニットの置換位置と吸収及び発光エネルギーレベルの帰属とその相関性について検討した。特に、77Kにおける複合錯体の発光測定結果とフランクコンドン解析による理論曲線との一致から置換位置の異なるRu(II)-Au(I)ヘテロ2核錯体ではほぼ同様の発光エネルギーレベルであり、金(I)エチニル錯体のみの場合に観測された大きなストークスシフトは起こらないことが判明した。しかし、Au(I)-Ru(II)-Au(I)複合錯体においては分子の対称性と発光エネルギーに明確な差異が確認できた。これらの事案に関してはその要因について今後明らかにして行く予定である。
|