研究概要 |
本研究計画では,配位子の精密設計と適切な金属イオンの選択を通して,金属配位酸素原子上に発現するキラリティーおよび金属周辺における不斉環境の精密制御の可能性とその限界を明確にし,「不斉酸素原子」というこれまでにない新しい概念を提唱する。配位子の合目的設計により,「不斉酸素原子」のみに由来する鏡像異性体の単離・構造決定を目指すとともに,その物性を詳細に解析することにより,「不斉酸素原子」の応用面での利用を目指す。 本年度の研究では,昨年度に引き続き,エーテル酸素原子に対して様々な位置に不斉炭素を有する配位子を用いて不斉酸素原子を発現することを目的とした。まず,亜鉛錯体のプロトンNMR測定により,エーテル酸素を金属中心に配位させるために必要な要因について検討した。さらに,銅錯体の結晶構造解析から,酸素原子からの位置に応じて,不斉炭素原子の立体配置により,不斉酸素原子の立体配置が高い選択性で制御されることを見いだした。銅錯体および亜鉛錯体の絶対配置はX線結晶構造解析により明らかにした。得られたキラル錯体は銅のd-d遷移領域において特徴的なコットン効果を示した。これは,溶液中において不斉酸素原子の立体配置が保持されていることに由来していると考えられる。
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