研究概要 |
本研究計画では,生体分子コンプレックスの結合能を総合的に定量評価するための新しい方法論を創出するために,1,動的アプローチとして,キャピラリー電気泳動反応器(CER)による生体分子コンプレックスの解離反応速度論解析の方法論を確立し,2,静的アプローチとして,キャピラリー電気泳動(CE)を用いた生体分子コンプレックスの熱力学的平衡定数の測定法の確立を目指す. CERでは数分から数十分程度の時間スケールで進行する反応系の速度解析が可能であるが,これよりも早い数秒から数十秒の時間スケールで進行する生体分子コンプレックスの速度論解析を可能にする方法論の開発を試みた.大きさ数センチ角のマイクロチップ上でCERと伺様の原理に基づくキャピラリー電気泳動(CE)分離および解離反応速度解析をう行マイクロチップキャピラリー電気泳動反応器(μCER)の生体分子コンプレックス系への適用を試みた.μCERを用いてDNA結合タンパクの一種であるsingle-stranded DNA binding protein(SSB)と一本鎖DNA(ssDNA)との複合体[SSB-ssDNA]系の解離反応速度解析(半減期:数十秒)に成功し,その解離反応速度定数(k_d)を得ることに成功した. 一方,これまで半減期が数時間程度という極めて長い時間スケールで進行する反応系の速度解析するための方法論は全く存在しなかった.我々はそれを可能とするための手段として,CERをベースに置換配位子による配位子交換反応をCE分離プロセスで行うことを原理とするLigand Substitution CER(LS-CER)を新たに考案し,これを用いて(置換配位子としてEDTAを使用)速度論的に極めて安定なTi(III)-カテキン錯体(半減期:3.8時間)の解離反応速度論解析に成功し,そのk_dを得ることに成功した.
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