研究概要 |
先に我々は,油水界面を用いてタンパク質を蛍光色素で標識することなく,ラベルフリーで電気化学検出する原理を見出した。本研究の目的は,本手法の基礎となる電気化学反応の解析と,タンパク質の電流検出型センサーおよび電解クロマトグラフ分離装置への応用である。初年度においては,本手法の測定原理となる油水界面でのアニオン性界面活性剤存在下でのタンパク質の移動現象の反応解析を主に行った。その結果,界面活性剤とタンパク質の界面での錯形成によってタンパク質が油水界面で吸・脱着するという反応機構が明らかになった。また,このタンパク質の移動反応によるボルタンメトリー波が,界面活性剤過剰の条件下でタンパク質濃度に比例する電流を与え,また,タンパク質や界面活性剤の種類によって波の現れる電位が異なることが見出された。このことは,タンパク質の定量および定性分析が原理的に可能であることを示している。微分パルスボルタンメトリー法を用いた検討では,本手法の検出限界は4μm(ミオグロビン)であり,実用上も満足できる感度が得られた。さらに様々なタンパク質を用いたサイクリックボルタンメトリー測定によって,タンパク質の波の現れる電位(立ち上がり電位)がタンパク質の表面の状態(polar,non-polar,charged)に良い相関があることが分かった。なお,多孔質テフロンチューブを用いる油水界面型フロー電解セルによってタンパク質を分離・検出する装置を試作し,予備的検討を行った。2種類のタンパク質を分離用セルの印加電圧を切り替えることによって選択的に界面に吸着させて,分離検出できることが示された。
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