研究概要 |
先に我々は,油水界面を用いてタンパク質を蛍光色素で標識することなく,ラベルフリーで電気化学検出する原理を見出した。本研究の目的は,本手法の基礎となる電気化学反応の解析と,タンパク質の電流検出型センサーおよび電解クロマトグラフ分離装置への応用である。前年度において,本手法の測定原理となる油水界面でのアニオン性界面活性剤存在下でのタンパク質の移動現象の反応解析を行い,界面活性剤とタンパク質の界面での錯形成によってタンパク質が油水界面で吸・脱着するという反応機構を明らかにした。そして,このタンパク質の移動現象によるボルタンメトリー波がタンパク質の定性および定量分析に利用できることを示した。本年度においては,タンパク質の分離検出を目的として,多孔質テフロンチューブを用いる油水界面型フロー電解セルを2連で用いたフロー分離・検出システムを作製した。まず,このシステムの性能評価のため,低分子イオンであるアセチルコリンとコリンの分離定量を試みた。イオン移動電位が60mVしか離れていない両イオンを一段目の分離用セルを用いてある程度分離したのち,二段目の検出用セルで得た電流応答を用いて同時定量できることが示された。この基礎検討をもとに,モデル実験として2種類のタンパク質(ミオグロビンとリゾチーム)の分離・検出を試みた。両タンパク質の油水界面での吸着電位は60mV程度しか離れていないが,一段目の分離用セルにミオグロビンのみを効果的に捕捉してリゾチームから分離し,分離用セルへの印加電圧を変えて得られた検出用セルの二つの電流ピークから両タンパク質を同時定量できることが分かった。これによりタンパク質のフロー分離・検出が原理的に可能であることが示された。
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