研究概要 |
α-synucleinはin vitroにおいては,ミセルとの相互作用によりN末端から中央部にかけてα-helix構造をとるが,繊維化する事で他のアミロイドタンパク質と同様にβ-sheet構造に変化することが報告されている.一方,速度論的解析から部分的に構造を持つ中間体の存在や原子間力顕微鏡の研究より、微細孔様の構造を持つ線維中間体の形成などの報告があり,アミロイド線維形成過程における中間体の存在が明らかにされた。in vitroでのアミロイド繊維化過程の中間体の存在は,当研究グループの研究結果からも明確であるが,未だその構造的詳細は明らかにされていない.この結果を踏まえて,本研究では初期段階における中間体の構造様式を解明する事で,中間体の存在とPD発症との関連性について明らかにする事を目的とした。 昨年度は,NMR法を用いた実験ではKTKEGVモチーフや疎水性領域などの特定のアミノ酸配列がアミロイド化に関わっていることが示唆された.また,DOSY測定においてα-synucleinの拡散係数が約0.3×10^<-9>m^2/secであるという情報を得ることができた.NMR法を用いた実験については試料濃度などの測定条件の改善により,新たな発見が期待できるものと考える.更に,SAXS測定により,α-synucleinのアミロイド線維形成機構における中間体が七量体であるということが示唆され,MALDI-TOFMS及びESI-MSを用いた質量分析により重合体の分布を観測することができた.更に,ESI-MSにおいては中間体の可能性を示した七量体と思われるイオンピークも検出された.七量体がイオン化されたと仮定すれば,中間体として溶媒中に存在している可能性が高い,重合体のイオンピーク強度が低い原因は様々だが,最もソフトなイオン化法であるESI法によって重合体の存在を捉えることができたという結果は,今後の研究に大きく貢献できるものと考える.
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