研究概要 |
本研究では,パーキンソン病(PD)特有のアミロイド斑を構成するタンパク質α-synucleinに着目し,そのアミロイド形成機構の分子レベルでの解析と疾患との関連性の解明を目的としている.また,家族性PDの原因遺伝子産物である3種類の点変異体についても解析した.特に,脳内情報伝達物質でありパーキンソン病の治療薬の一つでもあるドパミンとα-synucleinとの相互作用について解明するため,蛍光,CD,クロマトグラフィー,核磁気共鳴および質量分析を用いて検討した. まず,野生型と点変異型の比較ではアミロイド線維量は点変異により増加した.また,ドパミンはアミロイド線維化に対して抑制効果があることが明らかになった.サイズ排除クロマトグラフィーを用いてアミロイド線維およびその他の重合体(オリゴマー)の存在について解析を行ったところ,ドパミンの添加によりオリゴマーの形成が促進されることが明らかになった.さらに,質量分析の結果からドパミンは野生型および点変異体と結合し1~3分子単位で複合体を形成することが確認できた.また,NMR法による化学シフトへの影響の解析ではドパミン結合部位はC末端(120-130残基付近)およびN末端(1-10残基付近)が関与している可能性が示唆された. 以上の結果から本研究ではアミロイド線維形成機構とドパミンの影響を示したモデルを提示した.アミロイド線維は現在でも神経変性疾患の標的分子として盛んに研究が進められており,本研究において提示したモデルはアミロイド線維形成と疾患との関連性の解明に大いに貢献していると思われる.
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