物質の反応性、化学状態を最も直接的に反映するものは、その物質の電子状態を示す電子スペクトルであろう。しかし、この電子スペクトルの測定について、ほとんど実用化されていない波長領域(エネルギー領域)がある。それは数十eVから数百eVのエネルギー領域である。このエネルギー領域で重要な対象例として、Li K-吸収:55eV、B K-吸収:188eV、P L-吸収:135eV、S L-吸収:162eV、C1 L-吸収:200eVなどがある。このエネルギー領域は"軟"X線とも呼ばれる。特に、Liの50eV程度と言う"超ソフト"X線は、非常に測定が困難な領域であり、世界を見ても、測定報告が極めて少ない。しかし、これらの元素は、Li電池を始め各種の先端的材料のkey componentとして用いられているものから環境試料まで幅広い分析対象物質に含まれている。本研究では、この様な現状を鑑みて、"超ソフト"X線吸収スペクトルの測定法を開拓することを目的とする。 本年度は、超軟X線ビームライン光学系の最終的な調整を行った。現在、試料を大気に触れさせることなく試料室へ導入する機構の製作を行っている。 また、多くのカーボン試料の測定を行い、本超軟X線分光器システムが実用となることを確認した。さらに、リチウム化合物の標準試料のスペクトルデータを得ることに成功した。
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