研究概要 |
本年度は申請者を中心に大学院1年生1名、2年生2名で研究体制を敷いた。また、連携研究者としては、機能分子化学科環境・計測化学研究室岩月聡史講師に合成反応に関する助力を仰いだ。申請者及び院生1名はまず、貴金属イオンを捕捉する部位であるモノアザジチオエーテル誘導体の合成に取りかかり、モノアザジチオエーテルの一種であるATUを既報(茶山ら、分析化学、Vol. 47, pp. 1077-1083)に従い合成し、首尾良く目的物質を得た。そして、ATUにアクリロイル基を誘導した中間体を合成するとともに、NIPAAmモノマーとATUにアクリロイル基を誘導した中間体を重合比を変え反応させて、ATU-PNIPAAm共重合体を合成した。 合成したポリマーは下限臨界共溶温度(LCST)をもち、その温度以上で脱水和して凝集することが予想されたので、これらの物性を調べるとともに高分子中に含まれるATUユニットの含有量をICP発光分析法により正確に求めた。 申請者と岩月講師及び院生2名はATUを高分子中に含まないPNIPAAmを合成し、ATU単体を用いて金属-ATU錯体のイオン対を捕集する実験を行った。また、申請者及び院生の合成したATU-PNIPAAmによる金属イオンの捕集挙動とを比較評価した。その結果、高分子中のATUユニットの数が抽出される金属イオン(特に銀(I)イオン)濃度に比例することが明らかとなり、化学量論的な抽出反応が起こっていることが見いだされた。また、この他にATUを用いた液液抽出法による金属イオンの抽出実験も行い、その結果と本研究で合成した環境応答型高分子との比較評価も検討した。
|