本研究では、溶媒抽出の際に使用される有機溶媒が大きな環境負荷を持つことに着目し、有機溶媒を用いず温度感応性高分子を用いて貴金属イオンの溶媒抽出を行うため、貴金属イオンを選択的に抽出するモノアザテトラチオエーテル誘導体を高分子鎖内に誘導した新規温度感応性高分子を創製することを目的としている。本年度の研究では、一つの窒素原子と2つの硫黄原子もつ抽出ユニットをN-イソプロピルアクリルアミドと共重合し、新規高分子を数種合成した。そしてこの新規高分子の特性特に下限臨界共溶温度(LCST)がモノアザジチオエーテルユニットの含有量の変化と共にどのように変化するかを調べた。そして、貴金属が存在する水溶液中にこの高分子を溶解し、温度を上昇させることにより脱水和してガム上の固体になる高分子にどのくらいの貴金属イオンが取り込まれるのかを検討した。これと並かは上して、4つの硫黄原子をもつ抽出ユニットであるモノアザテトラチオエーテル誘導体とN-イソプロピルアクリルアミドと共重合し、新規高分子を数種合成した。モノアザジチオエーテル誘導体の時と同様に高分子鎖の中にどれだけの抽出ユニットが含まれるかをICP(誘導結合プラズマ型)発光分光分析装置を用いて、硫黄の発光強度を調べることによって、その組成比を明らかにすることに成功した。これにより、抽出される貴金属イオン、特に銀イオンと抽出ユニットとの化学量論比が明らかになり、抽出されている貴金属イオンが抽出ユニットとどんな錯体を形成しているかを推論することが可能になった。この結果は、次年度(最終年度)の総括的な抽出挙動の解明に大きく近付くもの大きな期待が寄せられている。
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