本年度の実施計画に従い研究を行った。 1)様々なアリル試薬とアルデヒドの反応において二核アリルパラジウム錯体がどのような触媒活性を示すか調査した。その結果、アリルホウ素化合物も利用できることを確認した。また、塩化スズあるいはジボロン酸を添加剤として用いると入手容易なアリルアルコールあるいは塩化アリルを直接用いることができた。 2)上記の結果を受け、様々な置換基を有するアリルアルコールの反応について検討した。二核錯体では置換アリル配位子の立体配置が単核錯体のそれとは異なるため、特徴的な位置および立体選択性を期待したが、残念ながら単核錯体を触媒に用いた反応と大きな違いは見られなかった。 3)二核アリルパラジウム錯体とベンズアルデヒドの量論反応を行い、反応中間体の構造の解明を試みたが、同定可能な中間体を得ることはできなかった。 4)脱離基を二つ有するアリル化合物(ジクロロイソブテン)とベンズアルデヒドの反応を二核アリルパラジウム触媒存在下で行うと、テトラヒドロフラン誘導体が生成することを見出した。詳細は次年度に検討する予定である。
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