研究概要 |
本研究課題の究極の目的は、半導体CdSナノ粒子の上に幾つかの機能を担う有機化合物を積み上げることで、生体中で動作する光応答型機能性触媒を創製することにある。 平成20年度は、最外殻部がカルボン酸であるデンドロンチオラートG1-G3(SNa,Co2Na)の設計・合成を行った。これらは、生体内投与に必要な水溶性を有する化合物である。まず、比較的合成が容易と考えられる、第一世代のデンドリマーG1(S-S,CO2H)の合成を行った。カルボエトキシ基を有するアルコールG1(OH,CO2Et)を四臭化炭素とトリフェニルボスフィンで処理して得たブロミドG1(Br,CO2Et)に、チオ尿素を作用させて塩G1(thiourea,CO2Et)とした後、6%NaOH:水溶液中で加熱した。その結果、チオラートG1,(SNa,CO2Na)へ導くことができた。次に、より困難と予想される第二、第三世代のチオラートG1-G3(SNa,CO2Na)の合成も検討した。世代の伸長はフェノール性水酸基の反応性を利用して行ない、トリオールG1(OH)とプロミドG1(Br,CO2Et)を縮合させアルコールG2(OH,CO2Et)とした。臭素化して得られたプロミドG2(Br,CO2Et)に対しチオ尿素を作用させることで、塩G2-(thiourea,CO2Et)を得た。これを6%NaOH水溶液中で加熱すると、チオラートG2(SNa,CO2Na)へ導くことができた。第三世代では、トリオールG1(OH)とプロミドG2(Br,CO2Et)を縮合させたアルコールG3(OH,CO2Et)に、上記の反応を行なって塩G3(thiourea,CO2Et)とした。加水分解を様々な反応条件で検討した結果、20%KOH水溶液中での加熱が最適条件と判明した。なお、得られたチオラートG1-G3(SNa,CO2Na)を酸性条件下で酸化すると、比較的安定に保存可能なデンドリマージスルフィドG1-G3(S-S,CO2H)へ導けることもわかった。 今後、金属クラスターならびに半導体ナノ粒子へのチオラートG1-G3(SNa,CO2Na)の自己組織化を検討し、デとドロン被覆ナノ粒子の光物性解明へと発展させる。
|