研究概要 |
本研究の目的は、半導体CdSナノ粒子の上に幾つかの機能を担う有機化合物を積み上げることで、生体中で動作する光駆動型触媒を創製することにある。上記生体内触媒を創製するためには、多光子捕捉能を持ち、CdS粒子に自己組織化可能な部位と生体内投与に必要な水溶性が含有されたデンドリマー(デンドロン)の供給が不可欠である。これまでに、第一世代から第三世代のデンドリマージスルフィドG1~G3(SS,R=H)の合成法を確立している。 CdSナノ粒子上に機能性有機物を自己組織化させるには、デンドロンチオールG1~G3(SH,R=H)として効率的に供給されなければならない。そこで本年度は、デンドリマージスルフィドG1~G3(SS,R=H)合成の各段階における最適条件の検討を行なうとともに、チオールの単離・精製法の確立を目指した。その結果、慎重な脱酸素条件下の加水分解において、デンドロンチオールG1~G3(SH,R=H)が単離できることを見いだした。 続いて、得られたデンドロンチオールのCdSに対する配位能力を評価した。分子量が規定されているCdS分子クラスターCd_<10>S_4(SPh)_<12>の配位子交換反応を利用することで、ベンジルメルカプタン修飾体Cd_<10>S_4(SCH_2Ph)_<12>の合成に成功した。本合成法はベンジルメルカプタン系CdSクラスターを構築する一般法であり、デンドロンチオールG1~G3(SH,R=H)に対しても適応可能である。 今後、本法を用いて固体表面、金属クラスターならびに半導体ナノ粒子複合系を構築し、これらの電荷分離光機能や光補修機能についての検討を行う。
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