研究概要 |
o-メトキシカルボニル-α-ジアゾアセトフェノン及びその誘導体をカルボニルイリド前駆体として、キラルルイス酸を触媒とする不斉誘起に関する検討を行っており、最近、親双極子剤として電子過剰型のビニルエーテル類を用いる1,3-双極子-LUMO、親双極子剤-HOMOの相互作用による逆電子要請型の付加環化反応において、高レベルの不斉誘起が可能であることを報告している。本研究では、ジアゾ基質一般性の拡張を目的として、1-ジアゾ-2,5-ヘキサンジオンなどの鎖状ジアゾジケトン類をカルボニルイリド前駆体として用い、オレフィン性親双極子剤との反応における不斉誘起について検討した。種々の鎖状ジアゾジケトン類をカルボニルイリド前駆体として電子過剰オレフィンであるブチルビニルエーテルとの逆電子要請型反応を10 mol%のLu(OTf)_3-(4S,5S)-Pybox-Ph_2錯体をキラルルイス酸触媒として用いて行うと、高exo選択的且つ最高で84% eeと良好な不斉誘起が認められ、ジアゾ化合物のケトン部の置換基に対する一般性も高かった。オレフィン基質一般性の検討としてt-ブチルジメチルシリルエーテルやスチレンなどのオレフィン類との反応においても不斉誘起が可能であることを明らかにした。o-メトキシカルボニル-α-ジアゾアセトフェノンやその誘導体をカルボニルイリド前駆体とする反応においてもオレフィン基質一般性の検討を行ったところ、ジヒドロフラン、シリルケテンアセタール、アリルアルコールを用いた場合にビニルエーテルの結果と比較すると反応性やエナンチオ選択性に程度の差はあるものの、(4S,5S)-Pybox-Ph_2とランタニド金属トリフラートより調製した錯体あるいは(R)-BINIM-4Me-2QN-Ni(II)錯体(10mol%)を触媒として用いると、不斉誘起が可能であることを明らかにした。
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