研究概要 |
我々は、o-メトキシカルボニル-α-ジアゾアセトフェノン及びその誘導体を前駆体として発生させたカルボニルイリドのキラルルイス酸を触媒とする不斉誘起にはじめて成功している。平成20年度の検討では、ジアゾ基質一般性の検討として、1-ジアゾ-2,5-ヘキサンジオンなどの鎖状ジアゾジケトン類をカルボニルイリド前駆体として用いブチルビニルエーテルとの逆電子要請型の付加環化反応においても、高レベルの不斉誘起が可能であることを明らかにした。平成21年度には、更なるジアゾ基質一般性の拡張を目的として、N-ジアソアセチル-2-ピロリジノンを基質とする検討を中心に行った。3-アクリロイル-2-オキサゾリジノンとの反応は、(4S,5S)-Pybox-Ph_2-Sm(OTf)_3錯体(10mol%)の調製法および反応温度(-10℃)の検討により、再現性よく良好なexo-選択性(92:8-93:7)とエナンチオ選択性(87%ee)を示す条件を確立した。また、オレフィン基質一般性の検討として3-クロトノイル-2-オキサゾリジノンとの付加環化反応をPybox-Ph_2-La(OTf)_3触媒(10mol%)存在下-20℃で検討したところ、極めて高いレベルの不斉誘起(95%ee,exo:endo=75:25)が認められることを見出した。3-(3-エトキシカルボニルプロペノイル)-2-オキサゾリジノンとの反応においては、レギオ異性体が生成し、Pybox-Ph_2-La(OTf)_3触媒(10mol%)存在下-20℃では、4種類生成する異性体のうち、ルイス酸非存在下では最も生成量の少ない異性体が主生成物として得られ(10:7:76:7)、そのエナンチオ選択性も良好(84%ee)であることを明らかにした。
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