研究概要 |
本研究は、環状構造にスチルベンを含む大環状芳香族化合物(メタスチルベノファン:MSP)を用いてロタキサン型分子ゲル化剤を合成し、環状構造の分子シャトル運動を停止できる光応答性ロタキサン分子ゲルの創製法を模索することを目的としている。平成22年度は、光異性化するMSP、ジヒドロピレン(DHP)について、官能基変換、光スイッチング機能の評価を行った。またMSPから誘導した半球型カリックスアレンを利用して、キラル分割材料への応用の可能性を検討した。 MSPは、ニトロ化およびアミノ化を行い、その立体分子構造、光異性化挙動を検討した。しかし、ロタロタキサン骨格の形成はできず、ロタキサンゲルとしての挙動は明らかにできなかった。一方、同様にスチルベン骨格を有するメタシクロファンから合成したDHPについて、ジヒドロチオフェン骨格を縮環することで、光異性化能の高いスイッチング素子を開発した。この分子は、約550,410,330nmに極大吸収を有しており、可視光と紫外光を溶液状態で繰り返し照射することで、スイッチング挙動を示すことを見いだした。その際に、100%に異性化するという特性をもち、溶液状態での安定性を示すことから新しい機能性部位としての可能性が期待される。一方、これらMSP類の類縁体である半球型カリックスアレンについて、ニトロ化およびその光学分割を行い、HPLCで分離剤として利用することで(-)α-ピネンとの立体選択的な相互作用を示すことを見いだした。
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