研究概要 |
光学活性ケイ素ルイス酸触媒による直接不斉マンニッヒ型反応において、反応のエナンチオ選択性および触媒回転数に与える窒素の置換基効果は非常に大きいことが分かった。研究開始当初、トシル基で置換したイミンを用いて生成物の鏡像体過剰率が47%eeの結果を得ているが、窒素上の置換基を、CH_2Ph、CHPh_2、POPh_2、SO_2Ph、ρ-MeOC_6H_4、COOCMe_3などに変えることで、エナンチオ選択控が大幅に向上することが明らかとなった。しかし、窒素上の置換基が嵩高くなると触媒効率が低下するなどの不利な点も明らかとなった。光学活性ケイ素ルイス酸触媒の構造もエナンチオ選択性と触媒回転数に大きな影響をおよぼす。これまでの検討で、無置換の(R)-BINOLを用いて反応を行ったところ、エナンチオ選択性はほとんど認められなかったが、(R)-BINOLの3,3'-位に2-ナフチル基を導入したところ、エナンチオ選択性が飛躍的に向上することが分かった。しかし、無置換BINOLで修飾したケイ素触媒に比べ、ナフチル置換BINOLで修飾したケイ素触媒は触媒活性が著しく低下した。さらに、嵩高い置換基を導入するとエナンチオ選択性は向上するものの、触媒活性は低下した。すなわち、(R)-BINOLの3,3'-位にトリフェニルシリル基を導入した光学活性ケイ素ルイス酸触媒を用いて、ジクロロメタン中、-78℃で反応を行ったところ、84%eeという比較的高い鏡像体過剰率で目的物を得たが、48時間の反応時間にもかかわらず、収率は17%であった。 一方、基質としてアルキニルイミンを用いて直接不斉マンニッヒ型反応を試みたところ、意外なことに、ケイ素エノラートがアルキンに付加するという新しい反応を見出した。有機合成上、非常に有用な反応であると考えられ、引き続き検討を行う。
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