1.1-Azabicyclo[1.1.0]butane(ABB)の反応 最終目標はABBの3位への炭素-炭素結合反応である。その反応を開発するためには、まずABBの反応性をより詳細に解明する必要がある。そのため各種求電子試薬との反応について検討してきた。ABBと活性アミドとの反応性については昨年度報告した。今回、この活性アミドとの反応で得られた化合物を加水分解したところ、条件によって切断される部位が異なること見出した。その結果、得られた化合物の一方がカルバペネム系経口抗菌剤L-084の中間体になりうるものであり、従来合成困難な化合物であったことが判明した。従って、本化合物を用いれば、従来法よりも簡便で効率的なL-084の合成法を開発することが可能であると考えられる。 2.1-Azabicyclo[3.1.0]hexane(ABH)の合成 アルキルリチウムを用いたABHへの閉環反応においても、ABBと同様、リチウムカチオンが重要な役を果していることを見出した。また、ジフェニルアジリジンへのモデル閉環実験を実施することで、本閉環反応がリチウムカチオンによる炭素-ハロゲン結合の活性化を伴いながらS_N2型の機構で進行することも推測できた。 3.ABHの反応 上記2.で得られたABHを用いて、ハロゲン化アルキルおよび酸塩化物で反応性を検討した。ハロゲン化アルキルとの反応ではピペリジン誘導体が主生成物として得られ、酸塩化物との反応ではピロリジン誘導体が主生成物であった。その選択性の違いを解明すべく種々検討したところ、熱力学支配か速度論支配かによって主生成物が異なることを見出した。本結果は、ABHの応用性を高めるものである。
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