研究概要 |
①1-アザビシクロ[1.1.0]ブタン(ABB) の反応およびその応用性の開拓:ABBと活性アミドとの反応で得られた化合物を加水分解すると、条件によって切断される部位が異なることを見出している。今回、その反応機構を解明すべく検討を行った結果、分子内のアミド結合が影響を与えていることを見出し、その機構についても推測した。今後、本知見を経口抗菌剤テビペネムピボキシルの合成へと応用する。なお、触媒を用いたABBの3位への炭素―炭素結合形成反応は、各種鉄触媒で検討したが、成功には至らなかった。 ②n-BuLiを用いた高歪み小員環の合成:n-BuLiを用いた1-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン (ABH)の合成検討の過程で、水溶液中での反応においてもリチウムの効果が確認された。そこで、今回エステルの加水分解反応にも応用した。その結果、2-メトキシ安息香酸エチルにおいて、水溶液中にも関わらずリチウムの配位による反応促進効果を確認することに成功した。また、ABHに変わる有用な高歪み小員環アジリノ[1.2-a] インドリンの合成を目標に、2-(2,3-ジブロモ)アニリンのn-BuLiによる閉環反応を検討した。その結果、主生成物が目的物であることを確認したが、その単離精製法の確立には至らなかった。今後の検討課題である。 ③ABHの反応:すでにABHとハロゲン化アルキルおよび酸塩化物との反応を検討し、熱力学支配か速度論支配かによって主生成物が異なることを見出している。今回、さらなる求電子試薬との反応を検討した結果、求電子試薬のカウンターアニオンの求核性で熱力学支配か速度論支配かが決まると推測するに至った。また、ハロゲン化アルキルとの反応では、最初にハロゲンアニオンの攻撃が速度論的に進行するが、次に開環・再閉環の平衡反応が起こり、最終的に熱力学的な生成物に移行することも確認できた。
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