研究概要 |
本研究では次の研究成果が得られた。 (1)キラルなβ-アミノアルコールから2段階で合成したアゾリウム塩存在下,Cu(OTf)_2触媒によるジエチル亜鉛と環状エノンとの反応を行ったところ、S体の共役付加体が良好な不斉収率で得られた。一方興味深いことに、Cu触媒前駆体としてCu(acac)_2を用い、同じNHC配位子前駆体と組み合わせたところ、R体の生成物が80%を超える鏡像体過剰率で生成することを見出した。(2)アミド官能基化されたC_2対称性NHCを新たにデザインし、NHC-Pd錯体の合成について検討したところ、用いるPd種前駆体の種類によって異なる錯体が合成できることが明らかになった。また、配位子上の水酸基の存在が錯体形成に大きな影響を与えることがわかった。(3)立体選択的なC-C結合形成反応における新しい触媒系の構築を目指し、ビス(ヒドロキシアミド)官能基化アゾリウム化合物のようなC_2対称でアニオン性のキラルなNHC配位子前駆体をデザインした。C_2対称性のpincer型配位子は強固に配位可能な多座配位子となり、金属中心に子午線状の環境を構築できるため、pincer配位子をもつ金属錯体は、基質のプロキラルな面を区別するのに適した触媒になることが期待された。実際、NHC骨格を基本とする新しいキラルなC_2対称の配位子を用いたCu触媒による環状エノンへのジアルキル亜鉛の不斉共役付加反応を達成した。(4)α-アミノ酸エステルから誘導したアゾリウム塩を用い検討したところ、L-セリンメチルからのアゾリウム塩が効果的に作用することを見出した。興味深いことに、先のβ-アミノアルコールからの誘導体を用いた場合と比べ、立体選択性が逆転した共役付加体が得られた。
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