研究課題
電極の表面改質および化学修飾に関する申請者独自の研究成果を基盤として、炭素繊維(フェルト状、粉砕粉末)、グラファイト等、種々の炭素材の電解表面酸化を行い、電解パラメータと導入官能基の種類(酸化レベル)・導入量との相関を精査した結果、各炭素材を陽極とし、支持電解質に硝酸リチウム、溶媒にアセトニトリル-水混合溶媒を用いて、支持電解質に対して4F/molの通電を行う条件において、フェノール性水酸基の導入量が最大となることを、親水性試験およびX線光電子分析により確認した。続いて、得られた表面酸化炭素材上の水酸基を手がかりとして、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)をグラフト重合する手法を探索した。電解還元重合法、高分子反応手法、リビングラジカル重合など種々のグラフト法を試みた結果、現時点で、リビングラジカル重合の一種であるRAFT法を用いた場合に好結果を得ている。得られた熱応答性高分子固定化炭素材について、X線光電子分析による表面分析を行い、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)に特徴的なスペクトルを確認した。また、PNIPAAmグラフト粉末状繊維については、水中に分散させ、その親水性の変化から、表面に導入したポリマー由来の熱応答性を示す結果を得た。一方、炭素材上に導入する不斉を有する熱応答性高分子の合成についても着手し、プロリノール、バリノールなどアミノ酸誘導体を側鎖に有するアクリルアミド系モノマーの単独重合体あるいはNIPAAmとの共重合体が、その構成モノマーユニットならびにユニット比に応じて、14〜55℃の下部臨界共溶温度を有し熱応答性を示すことを明らかにした。今回新たに合成した不斉を有する熱応答性高分子を導電性の炭素材にグラフトすることにより、温度制御に基づく、水中での不斉疎水場の出現と、その反応場における高効率電解反応が展開できると期待される。
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