研究概要 |
平成20年度に作製した赤外線照射による温度制御システムをポリプロピレンの延伸に対して適用した。赤外線による加熱挙動を検討するために、NMRプローブを用いないで試料の温度変化を測定した。従来の熱風を用いる加熱では目的温度に到達するために約10分程度要した。そして目的温度到達後も風による試料の移動のために温度が一定にならず変動した。これに対して、赤外線を用いた場合、目的温度に到達するのに3分程しか要しなかった。さらに、目的温度到達後の温度変動はほとんどなかった。加熱位置周辺の温度は熱風による加熱では20~30℃程度低下しているだけであったが、赤外線加熱では80℃以上低下しており、赤外線加熱では局所的に加熱されていることが明らかになった。試料温度175℃、180℃、190℃での延伸を行った。175℃では破断には至らず試料がチャックからはずれたが3つの温度の中で最も応力が高くなった。これに対して180℃、190℃ではそれぞれに、12,11Nで破断した。180℃での延伸では破断する直前まで175℃の応力変化より少しだけ小さな応力で変化しており、同程度の分子運動の状態と考えられる。190℃では応力がかなり低下しており、溶融がかなり進んでいると考えられる。 T_2測定を行った結果、全ての温度で延伸に伴い硬い成分、軟らかい成分ともにT_2が減少していることがわかった。175℃と180℃の延伸によるT_2の変化は軟らかい成分、硬い成分ともに同様な変化をしてしおり、応力変化と対応している。190℃では延伸初期においては175℃、180℃のT_2より長いが延伸により急激にT_2が減少し、175℃、180℃よりT_2が短くなった。このことは190℃での延伸により急激に分子運動が束縛されていることを意味している。つまり、延伸初期では溶融状態の分子運動によりT_2が低温のものより長いが、延伸により分子鎖の解きほぐしが進み配向結晶化が生じたためにこのように急激なT_2の減少が生じたものと考えられる。
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