研究概要 |
本研究では、両親媒性ブロック共重合体中の親水性セグメントを、側鎖末端基の疎水性を利用して、空気中や真空下という疎水性雰囲気下においても優先的にかつ自発的にフィルム最表面に偏析させ、親水性・反応性・生体適合性を示すポリマー表面を構築することを目的としている。平成20年度は、水溶性かつ感温性を示すポリメタクリル酸エステルセグメントを構成する新規モノマーのアニオン重合を検討した。メタクリル酸トリ(エチレングリコール)ビニルエーテル(1)のアニオン重合を、THF中、-78℃において行ったところ、メタクリル酸エステル部位のみで重合が選択的に進行し、一次構造の明確な単独重合体が定量的に得られた。また、ポリ(1)の側鎖ビニルエーテル基を酸処理することで、温和な条件下で脱保護反応が進行し、一次構造の明確なポリ(メタクリル酸トリエチレングリコール)に変換することが可能であった。得られたビニルエーテルは水に不溶であったが、脱保護後のポリマーは水溶性を示し、ビニルエーテル基が優れた保護基であることが明らかとなった。続いて、アニオンリビングポリスチレンを開始剤に用いて1とのブロック共重合を行った。得られたブロック共重合体は、設計通りの組成と分子量(M_n=21,000)に加えて、狭い分子量分布(M_w/M_n=1.07)を持ち、ポリスチレンセグメントとポリ(1)セグメントに起因する二つのガラス転移点を示した。以上の結果から、目的とする一次構造の明確な両親媒性ブロック共重合体が合成できたことを確認した。今後は、両親媒性ブロック共重合体のキャスト膜を作製し、その表面構造を解析していく予定である。
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