研究課題
本研究では、両親媒性ブロック共重合体中の親水性セグメントを、側鎖末端基の疎水性を利用して、空気中や真空下という疎水性雰囲気下においても優先的にかつ自発的にフィルム最表面に偏析させ、親水性・反応性・生体適合性を示すポリマー表面を構築することを目的としている。平成22年度は、疎水性のポリスチレンと親水性のポリメタクリル酸ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(1)または対応するトリ(エチレングリコール)ビニルエーテル(2)から構成されるブロック共重合体をリビングアニオン重合により合成した。得られたブロック共重合体は設計通りの分子量と組成を持ち、分子量分布も非常に狭かった。ブロック共重合体のキャストフィルムを作製したところ、その最表面は乾燥条件下においても親水性ポリメタクリル酸エステルセグメントによって覆われていることがXPS測定や接触角測定より明らかとなった。また、フィルムを室温において2NHCIで処理したところ親水性がさらに増加し、表面においてポリメタクリル酸エステルセグメントの側鎖ビニルエーテル残基の加水分解反応が進行し、ヒドロキシル基に定量的に変換できることを見出した。得られた親水性表面は、効果的にタンパク質の吸着を阻害することが確かめられた。これに対して、先に脱保護反応を行い、続けてキャストを行った場合、フィルムの最表面は疎水性のポリスチレンで覆われ、タンパク質を多く吸着することを確認した。以上の結果より、脱保護とキャストという二つのプロセスの順番を変化させることで、全く組成や性質の異なる表面が得られることを見出した。
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