銀を探針として用いる走査型トンネル顕微鏡(STM)よる分子像の観察と、レーザー光(532nm)の照射によりこの探針の表面に励起される表面プラズモンを励起光として用いる単一分子のラマンスペクトルの測定について検討を行った。STMにおいてはPtIr探針によりHighly Orientated Pyrolytic Graphite (HOPG)の原子像の観察には成功したものの、その表面に吸着させたローダミンなどの分子像の観察には成功していない。次に、ラマン散乱の表面増強効果のあるAg探針を機械的あるいは電気化学的研磨により先鋭化し、HOPGの原子像およびローダミンの分子像観察を試みたが、いずれにも成功していない。また、ラマンスペクトルの測定においては、Ag探針の表面に直接ローダミンを吸着させる方法では表面増強効果により良好なラマンスペクトルが観察されることが確認できたが、HOPGの表面に吸着させたローダミンにAg探針を接近させる方法では、まだスペクトルの測定に成功していない。 次に銀で表面をコートしたマグネタイト微粒子を用いる表面増強ラマンスペクトルの測定について検討し、ローダミンにおいて単一分子レベルの希釈度でラマンスペクトルの測定が行えることを示した。また、銀表面に西洋ワサビペルオキシダーゼを固定化して酵素反応を行い、生成物を表面増強ラマンで測定することで酵素反応の過程を追跡できることをしました。
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