研究概要 |
本課題研究は糖鎖合成の中で最も困難とされるGAG合成を化学-酵素法により達成し、糖鎖科学の課題を解決することを目的としている。本年度はこれまで合成例のない規則的硫酸化GAG合成[1,2]に向けたモノマーの有機化学的合成、および高効率GAG合成に向けた糖モノマーの酵素合成を検討した[3]。 [1] グルクロン酸(GlcA)ユニットにも硫酸基を有する所謂多硫酸化コンドロイチン硫酸合成のためのモノマー合成において、グルコース(Glc)を出発物質として酸化反応を経てGlcA誘導体とする合成スキームを計画した。6位のみ遊離のGlc合成において4→6位へのアセチル保護基の転移を完全に抑止することが出来ず、4,6位遊離のGlcを酸化して1級水酸基を有する6位のみを酸化することによりGlcAユニット部の合成が完了した。N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)ユニット部の合成は予定通りに完了した。 [2] ヘパラン硫酸モノマーの合成は2糖化する際のグリコシル化反応において合成困難とされる1, 2-cisグリコシドを構築する必要があったが、低温下(-50℃)、SN2反応が優先する条件で反応を行うことにより達成できた。現在最終段階の脱保護条件を検討しているが、後述の[3]と同様の問題が起こり、条件検討を続けている。 [3] 糖モノマーを酵素的に且つ固相担体上で合成を行うことを計画しているが、その前段階としてフッ化β-GlcAの合成を検討した。単純な化合物であるが、前駆体のアセチルーメチルエステル保護体のNMRスペクトルからGlcAの環構造がかなり歪んでいることが明らかとなり、そのため脱保護反応に際して加水分解反応が優先してしまい、目的物が全く得られないという事実が判明した。現在、アノマー位のフルオリド基を効率的に保護しながら脱保護反応を行う方法について検討している。
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