アルツハイマー病、プリオン病などの神経変性疾患および排気ガス、アスベストなどの大気汚染による健康被害は、共通してナノサイズの微粒子を原因としていることが近年明らかにされている。これらの微粒子が引き起こすナノ毒性は、生体内でストレス防御を担う蛋白質である分子シャペロンによって抑制されている。しかし、分子シャペロンは不安定な巨大蛋白質分子であり、疾患の治療・診断に直接用いるのは困難である。一方、申請者は近年分子シャペロンの基質認識部位に相当するペプチド(シャペロンペプチド)がナノ毒性を抑制することを明らかにした。そこで本研究では自己組織化能を付与したシャペロンペプチドにより、毒性ナノ粒子を検知する「シャペロンペプチドビーズ」を合成し、毒性ナノ粒子の微量計測や神経変性疾患の治療薬として利用する研究を行う。 シャペロンの機能を有する基質結合部位ペプチドを探索するために、神経変性疾患を抑制する機能が知られているαAクリスタリンおよびαBクリスタリンの基質認識部位断片を合成し、その凝集抑制機能を調査した。その結果FVIFLDVKHFSPEDLTVKおよびDRFSVNLDVKHFSにシャペロン活性を見出すことができた。今後はKLVFF、NFGSVQFVなどの自己組織化能を有するアミノ酸配列を並列に組み合せたペプチドを合成し、粒子として機能するペプチドの構築法を開発する。
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