研究課題
本研究では溶媒可溶なポリ(ジアシルヒドラジン)を開発し、その重合および酸化分解挙動を検討した。直鎖の脂肪族ジカルボン酸から誘導されたポリ(ジアシルヒドラジン)は溶媒不溶であった。これは、ポリマー鎖間に強い水素結合相互作用が働いているからであると考えられる。そこで、ポリマー主鎖を屈曲させるためにイソフタル酸をジカルボン酸として用いてポリ(ジアシルヒドラジン)を合成した。得られたポリマーは溶解性があったが、高分子量のものは溶媒不溶であった。そこで、イソフタル酸の5位にtert-ブチル基を導入したところ、溶媒可溶で高分子量のポリ(ジアシルヒドラジン)が得られた。モノマーとして活性エステルとジヒドラジドを用いて非プロトン性極性溶媒中で重合を行なったところ、高分子量のポリマーが得られた。得られたポリ(ジアシルヒドラジン)は次亜塩素酸ナトリウム水溶液で対応するジカルボン酸まで酸化分解され、一般にポリ(ジアシルヒドラジン)が酸化分解性ポリマーであることが明らかとなった。一方、得られたポリマーは空気中では分解点である300℃まで全く変化しないことから、ポリ(ジアシルヒドラジン)は酸化分解性であるにも関わらず、空気中では非常に安定であることが明らかとなった。これは、ポリ(ジアシルヒドラジン)が優れた酸化分解性ポリマーとして様々に応用可能であることを示唆している。さらに、酸化分解の生成物はポリマー原料のジカルボン酸であることから、リサイクルも容易な分解性ポリマーとしても位置づけられる。ヒドラジドは穏やかな酸化剤で酸化すると二量化してジアシルヒドラジンを与えることが知られている。そこで、ジヒドラジドをoxoneで処理したところ、酸化カップリング重合によってポリ(ジアシルヒドラジン)が得られた。すなわち、本系では空気中で取り扱いやすい酸化反応だけを用いて、重合と酸化分解の両方を行なうことができることが明らかとなった。
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