高温高圧水を利用するセルロースの前処理方法や糖化について研究開発を行った。得られた溶液は遺伝子組換酵母であるpYBGA1などを用いてエタノール発酵を行いエタノールが得られることを見出した。本研究ではセルロースの高温高圧水による前処理で得られた成分のHPLC分析及びエタノール発酵による生成エタノールのGCによる定量などについて検討した。高温高圧水利用による物理的糖化方法によりセルロースからの糖化効率を調べ、得られた溶液中の生成物をHPLC(Amide-80)で測定し、エチレングリコールを内部標準としてグルコース、セロビオース、副生成物などの定量を行った。 加水分解が困難である、セルロースの結晶構造のみから成るミクロクリスタリンセルロースの水懸濁液をオートクレープ中260℃±10℃の高温高圧に約30分で昇温し、水蒸気爆砕管から爆砕させた。生成物を分析した結果、表面のみが分解されたことが分かった。温度は265℃が最適であった。他の温度では、分解されないかまたは表面の分解が更に進んでいた。この結果、高温高圧での水蒸気爆砕によっては、セルロース結晶領域の加水分解は実質的に進行しないと結論された。 セルロース分子鎖の配列はマーセル化、すなわちカセイソーダ処理、で変化することが知られているので、マーセル化処理したミクロクリスタリンセルロースを265℃の高温高圧水中で、水蒸気爆砕した。マーセル化処理後、結晶構造の乱れを起すために、ジメチルスルホキシド中あるいは水中ヘセルロースを沈殿させた。マーセル化処理ミクロクリスタリンセルロースを希硫酸で100℃以上の温度で加水分解した。グルコースやセロオリゴ糖への加水分解は起らなかった。 ビスコースレーヨンを酸性条件下200℃前後の高温で加水分解したところ、他のセルロースよりも加水分解が進行したように見えた。現在、成分と構造分析を行っている。
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