研究概要 |
自動車用や家庭用燃料電池の心臓部である高分子電解質膜の合成法として、放射線グラフト重合は高耐久性のフッ素系高分子膜基材にイオン伝導性グラフト鎖を直接導入できることから有力な手段と考えられている。そこで、放射線照射により固体高分子膜中に生じた長寿命ラジカル及びリビングラジカル重合における安定化ラジカルの利用することで、これまで導入例の無い耐久性に優れた全フッ素系モノマーをグラフト鎖として導入した新規高温高耐久性電解質膜の合成の実現を目指した。 まず、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)ヘクロロメチルスチレンをグラフト重合した試料を用いてスチレンの原子移動ラジカル重合を検討したところ、リビング重合触媒である精製したCuBrを用い、配位子をビピリジルよりN,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)に変更したところ、反応性が向上し、反応時間1時間におけるスチレンの重合率が9倍となることを見出した。これらの触媒を用いて今回、架橋テトラフルオロエチレン(cPTFE)へ2-Bromotetrafluoroethyltrifluoro vinylether (BrTFF)を同時グラフト重合した膜について、スルホン酸誘導体を含む全フッ素モノマーであるPerfluoro (4-methy 1-3,6-dioxaoct-7-ene) sulfonylfluoride (PFMDS)のリビングラジカル重合について検討したが、グラフト率は、70℃、24時間反応で2%となり、ナフィオンのプロトン伝導率0.70S/cmを得るグラフト率の達成は困難であった。
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