光捕集化合物は、人工光合成モデルに留まるものだけでなく、新規な光機能材料にも期待することができる。前年度までに、我々はペリレンとアントラセンから構成される「光増感型デンドリマー」を合成し、そのエネルギー移動効率などの結果を得ている。本年度では、この「光増感型デンドリマー」の高効率の発光中心励起及び濃度消光の抑制といった特徴に着目し、分子構造がもたらす増幅自然放出光(ASE : Amplified Spontaneous Emission)などの発光特性について検討を行った。 デンドリマーを分散したポリスチレン薄膜に、ナノ秒Nd:YAGレーザーの第三高調波(355nm)で励起し、基板端面からの励起光強度依存性などを検討した結果、モノマー混交系においては、発光強度は励起光に対して、ほぼ比例的に増加するのに対し、内殻にアントラセンを有しないものでは、0.06mJにおいて閾値が観測された。また、アントラセンを内殻に有するものは、0.02mJ程度までに閾値が小さくなり、さらに発光強度の増加の割合も高くなった。これらの結果は、これまでに報告しているエネルギー移動とスペクトルの先鋭化に対応しており、デンドリマー分子構造がASEに大きく影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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