研究概要 |
メチル化β-シクロデキストリン結合型ポルフィリンホスト分子がテトラフェニルポルフィリンテトラスルホン酸塩(TPPS)との自己組織化により10^7上の結合定数で単一の分子集合体を形成することを報告してきた。このo-置換ホスト分子では中央のポルフィリンとCDとの相互作用が極めて弱いため、p-置換型とは異なって中央のポルフィリンが言わば「裸」の状態にある。本年度は,o-置換体各アトロプ異性体について,Zn(TPPS)とで形成される複合体の構造について可視分光光度計並びに蛍光分光により検討した。錯体形成において異性体構造によって化学量論比と構造が変化し,αβαβ型あるいはααββ型異性体ではポルフィリン間の上下にTPPSを配置することが可能であり,αααα型では片面のみにゲストが配置した構造を形成することが分かった。また,αααβ型では複数のホストが関与する複雑な構造を形成した。また,新規にアデマンタンをリンカーとするp-置換体を合成したところ,この分子も同様の「裸」の状態にあるポルフィリンホスト分子として機能し,初めてシクロデキストリン部位が4つともフリーの状態にあるp-CD置換ポルフィリンの合成に成功した。CD部位での新規なホスト分子との錯形成により,第二あるいは第三の分子と三元系構造体構築の鍵分子となりうるものである。また,αααα型の構造から得られた知見に基づきシクロデキストリン部位を8個有するホスト分子を新規に設計し,その合成に成功した。本系では4個のゲストポルフィリン分子を組織化することが可能であり,高次構造体構築を行う上で中心となりうる分子である。さらに,本研究で得た色素分子構造体の構造決定に関する知見並びに手法を応用するものとして有機色素分子の分光学的同定に関する研究も並行して行なった。
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