(1)駆動力源となる膜内外の非平衡度と非線形素子の興奮現象の関係の解明 自律系の非線形素子として、マイクロからミリメーターレベルの液/液界面又は固/液界面について、膜内外の非平衡度(実際には濃度差)を駆動力とする膜の興奮性について、反応次数や反応の起こりやすさと関係させて議論した。具体的には、リン脂質膜又は界面活性剤膜を含む界面の2相間に、非平衡条件として物質の濃度差をつけて、興奮や振動性を持つ非線形素子を形成した。動的表面圧-表面積の測定、駆動力となる物質の膜間の透過性、及び膜の変形度等の測定により、膜の非線形性を調べる。ここで、表面圧-表面積の関係が二次元ファンデルワールスの状態方程式のようなn字型の非線形性を持つ場合に興奮性を持つ。そして、化学構造とダイナミクスに依存した、化学刺激とその濃度又は濃度差に依存した興奮性膜の特徴的な変化を調べ、非線形素子の特性を定性的に解明した。 (2)興奮性膜の安定性、分岐、又は履歴に関する相図の作成 膜の安定性と不安定性を調べ、膜の興奮性や振動状態を理解するために、実験の制御パラメータである、膜圧や温度を動的に変化させ、膜の複数の安定性とそれらの間に存在する不安定性とポテンシャルの特徴、そして現象の緩和過程の実験を行った。また、これらの複数の安定性に関する分岐点と、同じパラメータであっても初期条件に依存して様相が異なる履歴のパラメータ領域について相図を作成し、制御可能なパラメータを決定した。また、膜に対する化学刺激又は物理刺激に対する、相図の変化についても定量的に解明し、実験系の多様性を検討した。同様に、可視化粒子を用いて流れ-駆動力-運動との関係を明らかにした。また混ざり合わない界面における物質の透過の不連続性に関する評価も行った。
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