本研究の目的は、種々の金属フタロシアニンが高い酸素還元触媒能を発揮する結晶構造や電極内担時状態を検討し、燃料電池を実用可能とするためのカソード極を構築することである。本年度までに、酸素還元反応触媒の高活性化には酸素の反応場からの脱離速度を上昇させる必要があり、それには酸素の吸着状態がμ-peroxo構造であることが不可欠なため、その構造形成に必要なα構造のフタロシアニンを電極内に設置する手法を種々検討した。その結果、電気泳動法と中和法のいずれもそれぞれが長所、短所のある手法であることが分かった。電気泳動法は、電極表面への固着力が強いことと薄い触媒層が得られる長所と析出時の反応が金属フタロシアニンの中心金属に依存して大きく異なり、多様な金属の系統的な比較に適さないという短所があった。一方、中和法は多様な中心金属を持つフタロシアニンを同様な条件で担持できる長所を持つが、前者より固着力が小さいことと触媒層が厚くなりやすく、電極内に局在化し易いという短所があった。これらの手法を用いて、電極作製法を統一して得られた電極の酸素還元特性比較結果から鉄を中心金属に持つαフタロシアニンは電極表面上の酸素濃度が限界値を超えなければ、高活性を維持可能な優れた酸素還元触媒として利用可能なことを見出した。しかし、限界値を超えると急速に触媒活性が低下し、さらに活性の再生ができなかった。このことを改善させるために、鉄ほどの高活性は示さないが、触媒活性能の再生が容易なコバルトフタロシアニンとの複合化を検討し、さらに高活性なカソード電極が得られた。
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