研究概要 |
本研究では水素結合部位を有する有機ラジカル分子の配列を決定するため,鋳型分子(プログラム分子)を結晶内に導入する.これにより,ラジカル分子の配列を高度に規制し,新規磁気物性の開拓を目指す.これを達成するために平成21年度の研究計画として,「昨年度に大量に合成した水素結合部位を有する有機ラジカル分子と種々のプログラム分子を連結し,新規スピン構造の実現と高度なスピン空間の構築を目指す.」ことを目標に挙げていた. 我々は,平成20年度終了の時点で大量の有機ラジカル分子の作製を完了しており,本年度はプログラム分子との連結を行う予定であったが,計画通りに進まなかった.その原因として,原料であるプログラム分子単体が結晶内での強い分子間水素結合によって,殆どの有機溶媒に溶けないという問題が生じた為である.しかし,現在,これら有機ラジカル分子,プログラム分子共にイオン化することで極性溶媒に溶かし込むことに成功し,問題解決の糸口を掴んだ.現在,pH調整による結晶化を試みており,有機ラジカルイオンと種々のイオン化されたプログラム分子の連結を試みている.平成22年度は上記実験の遂行の他,イオン化した分子を溶かした溶液に金属イオンを導入し,配位結合によって互いの分子を連結する方法も模索する予定である.これにより,平成22年度(本プロジェクト最終年度)には「プログラム分子を用いたスピン空間制御」に関して一定の成果が得られるように奮闘する.
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