研究概要 |
アルキル側鎖の置換位置が分子集合体に及ぼす影響を調べるため、2,3位にジアルキルおよび2,3,8,9位にテトラアルキル基を有するテトラセンの合成を行い、固体状態の光物性について調べた。2,3-ジアルキル体は3,4-ジアルキルチオフェンジオキサイドと1,4-アントラキノンとのDiels-Alder反応を経由する方法によって、また2,3,8,9-テトラアルキル体は3,4-ジアルキルチオフェンジオキサイドと5,8-ジヒドロキシナフトキノンとのDield-Alder反応を経由してジアルキル-1,4-アントラキノンに導き、もう一度3,4-ジアルキルチオフェンジオキサイドとDiels-Alder反応を行う新しい方法によって合成された。アルキル鎖長がそれぞれプロピルからヘキシル基のものまで調製を行った。結晶性はいずれも低く単結晶が得られなかったので分子配列の検討ができなかった。溶液中の吸収および蛍光スペクトルはどれもほぼ同じであり、アルキル置換位置と鎖長の効果は溶液中では現れないことを確認した。一方、固体状態ではその色調はアルキル鎖長では変化が小さかったものの、アルキル置換位置の数によって大きく変わった。すなわち、2,3-ジアルキル体はプロピル基で黄オレンジ色、ブチルからヘキシル基でオレンジ色であった。また、2,3,8,9-テトラアルキル体はプロピル体でオレンジ色、ブチル体からヘキシル体で黄色であった。固体の吸収スペクトルを調査するとその吸収端の波長は固体の色調と良い対応を示すことを明らかにした。
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