20年度は複数の色素分子(ピレン)を導入したRNA核酸の自己組織化により、RNAらせん状にピレン分子同士がπ電子のスタッキング構造を有するピレンアレイの構築を試み、その結果、下記の(1)〜(4)の成果を得た。 1.RNA自己組織化によるピレンアレイの構造制御:相補的な塩基配列を有する2つのマルチピレン修飾RNAをらせん形成させることにより、核酸のらせん軸に沿ってジッパー型のピレンアレイを構築することに成功した。さらにこのジッパー型ピレンアレイは温度により可逆的に構造を制御できることを明らかにした。 2.ピレンアレイの構造解析:吸収スペクトル、円二色性スペクトル測定よりピレン分子が二重らせんの外側に位置し、らせんに沿って一次元的にπ-スタッキングを介して会合していることを明らかにした。 3.ピレンアレイ蛍光挙動:RNA核酸上に構築されたピレンアレイは強いピレンエキシマー蛍光を示すことを見出した。ピレンエキシマー蛍光強度は導入するピレンの数に比例して増大すること、また発光波長がシフトすることを明らかにした。 4.ピレンアレイ蛍光消光過程:ピレンアレイから発せられるエキシマー蛍光はメチルビオロゲンにより電子移動消光され、その消光速度定数はピレンのモノマー蛍光よりも大きく、さらにピレンの増加に伴って消光速度定数も増加した。この結果は励起エネルギーがピレンアレイ上で非局在化していることを意味しており、高効率の光電変換システムへの応用が期待できる。
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