研究概要 |
これまで,キラル一次元ロジウム(I)-セミキノナト錯体[Rh(3,6-DBSQ-4,5-(2R,4R-PDO))(CO)_2]_∞が,170K付近の一次相転移に伴い磁気転移を起こすことを明らかにしている.本年度は,理論式を用いた磁化率の解析を行い,錯体分子がトリプレットダイマーを形成し,このダイマー間の磁気的相互作用が反強磁性的から強磁性的へ変化していることを明らかにすることに成功した.この構造相転移の詳細を調べるために,結晶構造の温度依存性を調べ,一次相転移に伴い一次元鎖が縮むことによって強磁性が発現していることを明らかにした.非線形交流磁化率の解析を行ったところ,長距離秩序の成長に影響される三次の非線形磁化率が観測され,ドメインの発達を示唆する結果を得ている.この錯体では,これまで二段階の磁気異常を観測しており,この磁気異常では,スピンがキャントした状態で凍結し,さらに,安定な状態へスピンが再配列することで二段階の磁気異常を示すと考えられ,キラルな結晶構造を反映していると考えている.また,[Rh(3,6-DBSQ-4,5-(R-1,3-BDO))(CO)_2]_∞についてSPring-8の放射光を利用して結晶構造解析を行い,対称心を持たない結晶構造であることを明らかにした.さらに,[Rh(3,6-DBSQ-4,5-(2R,4R-PDO))(CO)_2]_∞について騰電率の温度依存性を調べたところ,170K付近の一次相転移に伴いシャープな誘電率のピークが観測されたが,比較的伝導性を示すため,この騰電異常は伝導性によるものと考えられる.
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